prairiestreetの日記

人間到る処青山あり

ウナギの値段はなぜ高くなっているのか

年末年始帰省した際にひょんなことからこの本を知った。

帰りの飛行機で読みたかったので久々にKindle即ポチ。
高知新聞の記者たちが、ニホンウナギ(以下ウナギ)の稚魚であるシラスウナギ(以下シラス)を巡る闇を取材しまとめ上げた一冊。渾身の一冊と言って良いような内容。

 

取材のきっかけは、シラスウナギ集荷人の事務所に火炎瓶が投げ込まれた2016年の事件。これを機に「シラスは儲かる、県外に売ればもっと儲かる」「採捕量は嘘」などの話を聞き、高知で採れたシラスはどこにどうやって売られているのか、その取材を高知新聞に連載したものを書籍化。

 

最初は案の定というか、個人の密漁者→暴力団が関与し組織化→正規のルートから外れたものが高値で取引、という流れであった。

しかし現在は暴力団、反社会勢力に加え一部の凄腕バイヤーが台湾、香港、韓国を含めシラスロンダリングなる手法でボロ儲けしているという、当初の想定を遥かに超えるスケールの話になり最後は地球規模の資源管理まで連なっていく…2014年に絶滅危惧種に指定されたニホンウナギは、クロマグロのように採る量を計算しそれを各国が守れば資源として復活するのだろうか。
現在は政府がシラス漁を漁業として漁業法を改正、内容を簡単に言うと密漁取り締まりの強化及び生態系保護と資源管理(漁業法を抜本的に改正したのは2018年、安倍元総理)。

 

 

まず、大前提として漁業法改正前のシラス漁は「特別採捕」といい、採ること自体が禁止。県知事が特例として許可を出していた者のみが漁をできる。

普通に考えた場合、許可を得た採捕者がシラスを採る→県の業者→県のセンター→県の養鰻業者(小規模)→ウナギに育て出荷、という流れ。

 

問題なのは、各県でこのルールが異なる事。例えば、高知県では県内で採れたものは全て県内で完結する流れなのだが、別の県では採れたシラスを他県に売り込んでも良い、などがある。
高知県はシラスが多く取れるが養鰻業者の規模が小さく取り扱う量に制限がかかる。一方、他県にはシラスは多く採れないが養鰻業者の規模が大きく取扱量が大きいところがある。高知県で採れたものを他県に売れば儲けが大きくなるのは自明。しかもシラス漁は夜間作業。密漁者が殺到し県外へ持ち出そうとしやすい、ということ。

しかしこれを即裏ルートや闇取引というのは早計であり、例えば県の業者たちがその気になればグルになって安く買い叩く、自分たちで値段まで決めることができると言えなくもない。また高く買うところに物が集まる、欲しい人が高く買うのは資本主義としては当然とも言える。

例:)高知県で採ったシラス30万円 → 他県では50万円のため持ち出し → 他県の業者(許可者)が40万円で買い取り、50万円で売る…
これで採捕者も他県の業者も10万円ずつ儲かる、という話。裏のシラスを売りたい人と表のシラスを買いたい人、その間を取り持つのが言わずもがな…
なおこの話だと高知県では0、ウナギが採れないとなるが、全く採れないとなるとそもそも漁の許可が下りなくなるため少しだけ正規のルートにも流すのを忘れず、加えてマスコミが今年はウナギが採れないと報道するため値段が釣り上がるのを消費者がおかしいと思わなくなる、という流れ。

 

この関係者への取材過程を記したもの。内容を読むとよく今日に至るまで取材陣が無事だとも思うし、それだけ慎重かつ丁寧に作り上げたと言える。

 

 

結果的にウナギの値段の高騰という形で消費者にしわ寄せが来ているのだが嫌なら買わなければいいというだけである。特に土用丑の日だからウナギを食べると思考停止している人たちが。

なお個人的な話だが年末の帰省中にひつまぶしを食べた。正直言って微妙、値段と味が合っていないと思った。以前…15年ほど前は2500円でとても美味しかったが、今は4000円でまずいものを食べさせられているとさえ思った。また一方、ふるさと納税で返納品のうなぎを昨年食べたが湯煎だけで味もとても美味しかった。下手な店に行くくらいならこれでいいよ。納得できなければ今後食べなければいいだけの話だ。